発達障害について
1.はじめに
2.総論 〜発達障害ってなに?〜
3.検査・診断編
【発達障害の診断に心理検査は必要ですか?】
WAISIVやWISCといった心理検査は、発達障害の診断に必要ではありません。
WAISやWISCは脳の機能を測定する知能検査であり、発達障害の診断基準に含まれていないからです。
知的発達障害の診断には知能の評価が必須です。しかし一般にいう発達障害を診断する際に高額かつ時間のかかるWAISをするよりも『学校の勉強は得意ですか?』『どんな科目がどんな成績でしたか?』の質問によって得られる答えと本質的な違いはありません。
いつの頃からか、WAISを受けることが発達障害の『本格的な検査』であるとの社会通念が拡がっているように感じます。本質からズレた検査を受けることで、診断の核心を見落とすことを懸念します。
『発達障害』と呼ばれる状態が原因も発症のメカニズムもわかっていない以上、頼るべき根拠は診断基準(DSM5TRまたはICD11)に一致するかどうか、しかありません。
したがって診断基準に一致した症状チェックリストのみが、心理検査として有用です。
【発達障害ってどう診断するのですか?】
発達障害があるかどうか判断する上で重要な点は下記の3点です。
・ その特性に合致しているか?(その特性用の専門的なチェックリストとの照合)
・ その特性は幼小児期からみられているか?
・ その特性が本人の日常をどのように妨げているか?
ところが実際には、発達障害特性があるかないかだけでは、問題解決になりません。
『私は発達障害ではないでしょうか?』と訪れた方が、本当に尋ねたいこと、真に確かめたいことは
『私の生き辛さは発達障害によるものなのですか?』に違いないからです。
現実には、発達障害のみが生き辛さの原因であることは、まずありません。
愛着障害/複雑性PTSD/発達トラウマ と呼ばれる経緯も大きく関わりながら、生きてきた過程で受けた心の傷、身体の状態、周囲の環境、といった多彩な要素が関わりあった結果、うつ/双極性/不安障害/精神病症状/各種依存その他といった症状が複雑に組み合わさって『生き辛さ』を成しています。
ということは、『私は発達障害ですか?』=『私はどうしてこんなに生き辛いのですか?』に答えるためには
・ 親はどんな風だったか? ⇒遺伝的な特性は? 親は子の心を丁寧に扱ったか?
・ 本人の行動特性を表す証言と証拠は?⇒親/教諭コメント/提出物/その他資料
・ 子供用の特性リストに子供時代の在り方は一致するか?
・ どんなトラウマを経験し、その結果どんな影響を受けたか?
・ 本人は自分をどう観て、自分をどんな存在だと認識しているか?
・ 現在はどんな環境(職場/家庭/プライベート)にあり、どんな影響を受けているか?
・ 現在どのような精神心理症状(うつ/躁/希死念慮/不安/パニック/強迫症状/依存/逃避)を呈しているか?
・ 現在の特性チェックリストに、本人はどう一致しているか?
・ 現在の状況でその特性は、社会生活上どのような利点欠点を表しているか?
発達障害の診断をするにあたり、ネットで拾ったチェックリストに一致するだけでは『疑い』『その傾向がある』に過ぎません。『発達障害の診断は必ず医師にしてもらいましょう』という理由はここにあるのです。
4.治療・対策編