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院長コラム

発達障害について

1.はじめに

2.総論 〜発達障害ってなに?〜

【どんな人を発達障害とよぶのか】

大船心療内科では、発達障害を下記のように定めています。

ADHD:子供の頃からだらしなく、落とし物忘れ物不注意ミスが多くて、じっとしていられないタイプ
ADHD衝動型:上記の特性をもちながら、カッときて衝動を抑えられないタイプ
ADD:じっとしていられるけど、その他はADHDとほぼ同じ特性
ASD:自閉スペクトラム障害 空気が読めず人の表情が読めず、人づきあいがうまくできず、こだわりが強い
SCD:社会コミュニケーション障害 ASDのうち、こだわり特性が無いタイプ
APD:聴覚情報処理障害 耳から聞いた情報を認識したり記憶したり利用したり出来ないタイプ
RSD:拒絶敏感症 指摘/注意/叱責に対して激しい感情反応が生じ、自責が強いタイプ

生まれた時の特性は、人の数だけ存在しますが、米国精神科学会の基準にRSDを加え、さらに学会では存在を認められていないHSP(敏感で繊細な人)を加えた分類を大船心療内科では採用しています。
※HSPは純粋に特性であり障害ではないので上記に挙げておりません。

ひとつひとつの詳細については、おって記事をあげていきます。

上記の特性どれをとっても、有ると無しの二択ではありません。
白と黒の間にグレーが濃淡をもって存在し、それがさらに、まだらブチになっているイメージです。
そして上記特性のうち一つだけに相当する人もいれば、全項目が一致する人もいて、これまた多様です。

その上、男性と女性では同じ発達特性でも特徴が異なるのです。ADHDひとつとっても、男児と女児では症状の現れ方が大きく違います。
加えて小児と大人では症状が異なります。こうしてみると性別と年齢だけとっても、各特性に大きく影響することを考えると、発達障害という概念が単純なラベルに収まるものではないことが見えてきます。

ちなみに井出は、それはもう顕著なADHDであり、さらにAPDが明確です。

【発達障害って本当に存在するの?】

発達障害は存在する、と井出は信じています。
生まれもった脳の構造の違いがあり、生まれ持った脳の働きの違いがあり、それが生き辛さに強く影響するとき、発達障害と呼ぶべき人達がいるのは間違いありません。

ただし発達障害という言葉は、誤った認識に基づいていると感じます。

本来は「非定型発達」(大多数の人とは異なる脳の構造や働き) に対して 「定型発達」(大多数の人と共通する脳の構造と機能) の人がいるのです。
では非定型発達の人は異常であり病気であり治すべき対象かというと、とんでもありません。
非定型発達の人の斬新で柔軟な発想、強烈な集中力、独自の感性、がどれほど家族を、チームを、組織を、社会を、そして人類を救ってきたことでしょうか。
人類の存続と進化は非定型発達人の貢献が欠かせなかった事実は、過去に偉人とされる人の多くが非定型発達を見せていることからわかります。

ではなぜ今の日本社会で「発達障害=困ったちゃん」として扱われているのでしょうか?
それは発達障害とラベリングされる人は、ほぼ全員が「生き辛さ」を露呈しているからです。
【発達障害の人も、心の傷をもっている】

生き辛さとは、他人と上手くやれない、自分が何だかよくわからない、何をしても上手くいかない、虚しい、といった自分の価値や存在意義を感じられず孤独感に苛まれる状態をいいます。

発達障害の人が生き辛さを抱えるとき、生き辛さの原因を全て発達障害のせいにするのは不合理です。
生き辛さを治す、を主題に掲げる井出からみると、発達障害は生き辛さの原因として数ある要因のひとつに過ぎません。
【複数ある生き辛さの原因のうち、最も影響が大きい要素とは】

人が生き辛さを抱えるとき、その原因として一番大きいのは、生まれる前後を含めた乳幼児期に人からの愛情を十分に受けられなかった結果、健全な自己肯定感が育まれなかったことによる、が井出の見解です。
人は何よりも愛を求め、愛を必要としているのに、愛が与えられなかったとき、心に傷を負います。
新生児の頃から人は、愛されないショックを乗り越えて、心無い現実を生き続けるために自分を変えることで適応しようとします。
愛されないという過酷な状況を生き延びるために、自己認識を歪め、周囲への反応を変え、それぞれ身に着けたパターンで「この現実であっても大丈夫」であろうとするのです。この自己認識の歪みと、反応パターン獲得を、私は心の傷反応と呼んでいます。
そのとき獲得したパターンが、幼小児期を離れてもなお、本人が他者と満たされる関係をもつことを阻みます。
【親のもつ発達偏りは、子供の心の傷につながりやすい】

統計的事実として、発達障害の子の親に発達障害があることが多いです。発達障害の配偶者に発達障害の人が多いことも知られています。

例えばADHDとASDを併せ持つ母親(ADHDとASDはよく合併します)の夫もASDであったとしましょう。

母親は自分のADHDに苛立ち、人並みに出来ない自分を責め、ただでさえ、とっちらかる新生児の育児に発狂しそうなストレスを感じています。ADHD衝動型の特性も持つ母親は、カッとすると自分を抑えるのが苦手です。さらに母のASD特性は、赤ちゃんの感情表現(泣く、の一択であっても)を読みとることを苦手とし、同じ泣くでもお腹が空いて泣いているのか、おむつが濡れているのか、眠いのか、察知できません。夫はASD特性があるが故に、妻がどれほどフラストレーションを感じているか察知できず、激しく妻を苛立たせてしまう。
結果として母親は子供に自分の感情をぶつけてしまい、子供が怯え、傷つき、愛する母/愛して欲しい母 が理不尽な攻撃を向けてくることに混乱して、世界は安全ではない!と自らに刻みつけるのです。
そしてADHDの子は大きくなると、特性に由来する問題を頻発し、ASDの子は自分の世界に閉じこもりがちになり、さらに親との心の距離が遠ざかる方向に向かうかもしれません。

上記は、発達の偏りをもつ親が、いかに子供の心を傷つけやすくなるか、を仮想物語として描きました。
言いたいことは、発達特性そのものが、心の傷を受けやすい条件となる、ということです。

さらに、心の傷を受けた結果、発達障害のように見える大人になることは、あります。
数多くの文献がそれを証明しています。
わかり易く表現すると、親から愛されないショックを紛らわすために、アレもコレもと気を散らして自分の心の苦しさを感じないように行動すれば、ADHDに見えます。あるいは、親から愛されないショックに直面しないように、自分の心を閉ざして自分の世界に閉じこもれば、ASDに見えます。生まれつきADHD/ASDでなかった子が、親から愛されない(愛着障害)の結果、ADHDやASDのように見える大人になることは、現実に少なくありません。

ということは、生まれつきADHD/ASD特性をもっている子が、親から受けた心の傷によって、その特性をさらに歪ませる可能性もおおいに考えられます。

そもそも本来の生まれつきADHD/ASDは、生き辛さを起こす障害名ではなく天からのギフトだと私は信じています。
ADHDであれば、新しいことにリスクを恐れず果敢に挑戦し、狙いをつけたら徹底的に探求するマインドは、起業のような世の中を変える行動特性に最適です。
ASDも、自分のこだわりを徹底し、誰が何と言おうと自分の道を徹底的に突き進むプロフェッショナルとして大成する資質につながります。
これらの特性が、愛着の傷や、いじめなどの心の傷の影響を受けて歪んだ結果、生き辛さとなっているのです。
そして心の傷は治すことができます。
ですからADHD/ASDとされている行動特性に対して、心の傷治療を行うと、後天的に獲得した影響が消えて、生まれ持ったギフトであるADHD/ASD特性が現れます。定型発達の人になる訳ではありませんが、本来の自分を取り戻すことが出来るのです。

3.検査・診断編

4.治療・対策編

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