人と関わることに恐怖感を覚える症状で、近年では社交不安症とも呼称されています。 人前で顔が赤くなることが怖い赤面恐怖、人前で話すことが怖いスピーチ恐怖、人から向けられる視線が怖い視線恐怖等、様々な症状があるのですが、いずれの症状も人前、あるいは人を相手にすると極度の緊張や不安・プレッシャーを感じてしまうものです。 また、対人恐怖症の患者は不安や緊張を他人に知られたくないので、隠そうとする傾向にあるのですが、隠そうとすればするほど、かえって不安や緊張を高めてしまうなど、悪循環を起こすケースもあります。 これらの症状が続くことで嫌悪感、やがては人を避けようとしてしまう場合もありますが、人を避けることでさらに人が苦手になる悪循環に陥りやすいです。
対人恐怖症の原因は特定されていません。
遺伝的な要因であることは分かっていますので、
体質的なものだと考えてよいでしょう。
しかし、遺伝的要因以上に生育環境、
つまりは後天的な要因の方が大きいと考えられています。
例えば、かつて人に苦しめられた経験がある人は、
苦い経験から「また同じことを繰り返すのではないか」との
不安が対人恐怖症となるケースもあります。
また、自分自身のことを強く否定されてしまった場合、
トラウマとなってやがては人に対しての苦手意識から
対人恐怖症へと変化するケースもあります。
いずれにも共通しているのは「二度とそのような思いはしたくない」という気持ちです。
この気持ちが、相手への恐怖感になります。
一種の防衛本能で、怖いと思うことで近寄らないよう自分自身に信号を送ります。
その他に、かつての失敗と同じようなシチュエーションに遭遇することで、
その時の思いが甦って対人恐怖症となるケースもあります。
不安や緊張だけではなく、過呼吸や発汗や吐き気、
悪寒、胸の苦しさを感じることもあります。
その他、話すことができなくなることもあります。
話したいとは思っても声がでないこと、あるいは赤面したりなど、
心因的な要因が多いです。
対人恐怖症の診断は基本的には問診にて行いますが、
他の症状がないかを確認する場合もあります。
例えば、対人恐怖症ではなく、実はてんかん、
あるいはパニック症といったケースもありますので、
他の症状が疑われるときには、他の症状の検査も同時に行うなど精査します。
対人恐怖症の治療法としては、主に薬物療法と認知行動療法があります。
抗うつ薬の一種である選択的セロトニン再取り込み阻害薬が主に用いられます。
不安を和らげる効果が確認されているこちらの薬を服用するのですが、
吐き気や眠気といった副作用がある点には注意が必要です。
但し、仕様を継続することで副作用が軽減されるとの報告もあります。
また、急に服用を停止するとめまいや頭痛といった
薬物中止後症状に陥るケースがありますので、
薬の量に関しては医師の指示を仰ぎ、
いきなり辞めるのではなく徐々に減らしていく形がよいでしょう。
なぜ対人恐怖症となってしまうのか、その理由を探り、
偏りを修正することで対人恐怖症を改善するものです。
再発予防に効果が期待できるだけではなく、
薬よりも有効性が高いとのレポートもあるなど治療では重要な役割を担っています。
先にもお伝えしましたが、対人恐怖症の原因は様々です。
そのため、その原因にアプローチし、症状を改善します。
例えば、かつて人から拒絶を受けたことがある患者であれば、
「なぜ拒絶されたのか」、
「そもそもその拒絶にはどのような意味合いがあったのか」などを考えます。
そうすると、実は決して恐怖心を抱くようなことではないことに気付かされ、
対人恐怖症の改善ができるという仕組みです。
もちろん上記はあくまでも一例です。
対人恐怖症の患者様は、原因に対して極度に恐れてしまっている傾向にありますので、
実は原因がさほど大したことではない、
あるいは既に解決できるものだと自覚してもらうことで、
対人恐怖症の改善を促進する治療法です。
対人恐怖症は相手のあることなので予防は難しいことでしょう。
物心がつく前の恐怖体験が引き金で対人恐怖症になってしまう患者もいます。
そのため、予防よりも治療後に心掛けるべき点を把握しておきましょう。
まずはそれまでの対人恐怖症の原因の理解です。
回避した方が良いことであれば、治療後も回避を心掛けましょう。
また、荒治療ではありますが、免疫を付けるという手段もあります。
例えば、人前で緊張してしまう患者様に対し、
人を避けるよう治療するのではなく、
むしろより多くの人前に出すことで、
実は人前に出ることが大したことではないと思わせるものです。
実際、それまで対人恐怖症だったものの、
治療を経て人前に出るのが楽しい・好きになったという患者もいます。
それまでが嘘のように、人前で堂々と話せるようになったり、
あるいは人から視線を集めることが好きになったという患者様もいるなど、
決して不治の病ではありません。