何らかのきっかけによって呼吸が正常に行えなくなることで過呼吸の状況となってしまい、 血液に変化が生じることで体に異変が生じる症状です。 過呼吸となると、正常ではない呼吸となることから、 二酸化炭素の放出量が増え、体内の炭酸濃度が低下します。 結果、血液がアルカリ性に偏ることで異変が生じます。 過換気症候群だけで悩む患者もいれば、うつ病やパニック症など、 他の症状と併発するケースもあります。 基本的には突発的なもので、数時間程度で回復するのですが、再発するケースもあります。
過換気症候群の原因は心因的なものです。
例えば、強いストレスや緊張状態、
プレッシャー、不安などです。
これらやパニック障害等によって強い発作を生じ、
さらには発作によって過呼吸に陥ることで過換気症候群へと発展します。
過呼吸になると、呼吸回数が多くなるだけではなく、
回数が多くなることで二酸化炭素の排出量が増えてしまい、
血液の中の炭酸ガス濃度が低下してしまいます。
この状況に対し、中枢神経は呼吸を抑制しようと指令を出します。
これは、中枢神経が呼吸を司る器官であるからこそですが、
呼吸が抑制されることで過換気症候群の患者は呼吸に対して違和感を覚えます。
本来の呼吸とは異なり、息苦しさを覚えるので、
より多くの呼吸を求め、より激しく呼吸を求めてしまいます。
つまり、過呼吸の状況を悪化させてしまう悪循環に陥ります。
この状況が続くことで炭酸ガス濃度の更なる低下を招き、
体に異変が生じることで更なる悪化を招くという、悪循環となります。
このように、基本的には心因性の症状なので
神経質な人や緊張しやすい体質の人が過換気症候群になりやすいです。
過呼吸の状態が続くことで血液の炭酸ガス濃度の
低下からアルカリ性偏重を生み、
血管の収縮に伴う手足のしびれや筋肉のけいれん・収縮、
トルーソー徴候がみられますが、長時間継続したり重症化すると、
全身の痙攣や湿疹にまで発展します。
過換気症候群の厄介な点として、
このような症状が更なる過換気症候群の悪化を招く点です。
全身の痙攣では患者は意識がありますので、
自分の体がどうなるのかという不安も感じます。
この不安が更なる過呼吸、さらには過換気症候群を招くことになります。
ただし、重症ではない場合は数時間程度で改善するケースもあります。
必要な場合には血液検査を行うことで血中の二酸化炭素濃度を調べたり、
胸部のレントゲン検査やMRI等を行うことで
心臓や肺に何らかの疾患がみられないかを判断しますが、
基本的には問診で診断します。
これまでの過換気症候群と思われる状況や、
その時にどのような状況だったのかなど、症状から総合的に判断しますが、
過呼吸の際に筋肉のけいれんを起こしている場合には、
過換気症候群の可能性が高いです。
過換気症候群は心因的な原因にて発症する症状なので、
まずは患者の心因的な原因を改善することが大切ですが、
他にも呼吸法のレクチャーが挙げられます。
意識的に呼吸を遅くしたり、あるいは呼吸を止めるなどして体内・
血液中の二酸化炭素の量を増やすよう努めたり、
深く息を吸う腹式呼吸を実践することで落ち着きを与えることもあります。
かつては一度患者自身が吐いた息を吸わせるペーパーバック法が多くみられていましたが、
炭酸ガス濃度を高めてしまうリスクがある点や、
酸素不足による低酸素状態に陥るリスクがあることから、
近年は減少傾向にあります。
また、不安を強く感じたり、プレッシャーに弱い患者には抗不安薬による治療も行いますし、
過換気症候群だけではなく、他の症状が併発している、
あるいは既に他の症状が診断されている患者の場合、
他の症状の治療法と合わせて実践します。
特に過換気症候群はうつ病やパニック症、
全般不安症の患者に発症するケースも見受けられますので、
それらの症状との治療法も併せて、
患者の様子を見ながら適した治療を実践します。
過換気症候群の予防としては、日常生活の中で不安やプレッシャー、
ストレスを感じない生活を送る点や、呼吸をゆっくり行うことです。
過呼吸とは、呼吸が増えることです。深く息を吸い、
ゆっくりと吐く呼吸を意識することで呼吸の回数を抑えるだけではなく、
リラックス効果ももたらします。
治療後も基本的には同じですが、
一度でも過換気症候群を発症したことがある場合、
過呼吸の大変さを理解している一方で、思い出して
「再発したら大変」との思いが更なる不安やプレッシャーとなり、
過換気症候群の呼び水となる可能性もありますので、
あまり過換気症候群に対して不安を感じないよう、
呼吸法で対処できるものだとの理解も必要です。
また、パニック症や全不安症、うつ病といった他の精神疾患の患者の場合、
それらの治療が結果的に過換気症候群の治療にも繋がっていますので、
まずはそちらの治療を重点的に行いましょう。