胃潰瘍とは、胃の潰瘍を意味する症状です。 潰瘍とは皮膚や粘膜がただれることを意味した言葉で、 胃の中で炎症等が繰り返し起きることで、胃粘膜に異常をきたす状態です。 そもそも胃粘膜は異物を守る役割を担っています。 食物の消化を行い、さらには体内に進入してきた細菌の殺菌作用もあるのですが、 胃潰瘍に陥ると、それらの機能が低下してしまいます。
胃潰瘍の原因は主にピロリ菌感染、ストレス、投薬治療の副作用によるものとされています。
ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリです。
旋回するバクテリアであることからこのような名称となっています。
ピロリ菌は胃の出口(幽門)から出てくるものですが、近年、感染者数は減少しています。
ピロリ菌に感染することで、胃炎が起きてしまい、胃粘膜が弱まることで胃潰瘍となってしまいます。
しかし、衛生面の向上から、近年ではピロリ菌由来の胃潰瘍は減少傾向にあるとされています。
近年、ストレス由来とされる胃潰瘍も増えています。
ストレスによって自律神経が乱れることで、消火器系のコントロールも乱れてしまいます。
胃液中の塩酸やペプシンが胃の粘膜を消化してしまうなど、
内臓機能の異常が胃潰瘍をもたらします。
主に沈痛解熱薬であるNSAIDsを服用した際、
副作用として胃潰瘍が起きるケースがあります。
この場合、薬の副作用になりますので、投薬を停止することで胃潰瘍も改善します。
胃潰瘍は主に上記3種類が原因ですが、
他にも暴飲暴食や早食いなど乱れた食生活が胃に負担をかけて
胃潰瘍を発症するケースもあれば、
喫煙によって胃粘膜の血流を低下させることで胃潰瘍が発症するケースもあります。
その他、コーヒーやお酒の大量摂取が胃潰瘍の原因となるケースもあります。
胃潰瘍の症状としてまず挙げられるのがみぞおち部分の痛みです。
特に食後に痛みを起こすことが多いのですが、
これは本来であれば食事で摂取した物は胃で吸収される際に消化されるのですが、
胃潰瘍では消化機能が低下することから、
接種した食事が潰瘍部分を刺激することで痛みを伴うのです。
また、吐き気、嘔吐といった症状が見られるケースもあれば、
体重減少や食欲不振、吐血、貧血といった症状が見られる患者もいます。
一方で、無痛の患者もいます。
実は、痛みと潰瘍の程度は相関性がないとの指摘もあることから、
胃潰瘍の状態が悪いとしても、必ずしも大きな痛みを伴うとは限りません。
つまり、胃潰瘍そのものは決して悪い状態ではないとしても、
大きな痛みを伴うケースもあります。
また、炎症がすい臓にまで波及している場合、
すい臓を通して背中の痛みを感じるケースもあります。
このように、胃潰瘍は個人差が顕著な症状で、
他にも口臭や酸っぱいゲップが出たという患者や
胸やけしたという患者もいますし、下血、黒い便(タール便)なども確認されています。
このように、胃潰瘍の症状は実に様々なものです。
内視鏡検査が行われます。内視鏡により、
胃潰瘍かを判断するだけではなく、ピロリ菌の有無、
出血の有無、さらに肺がんとの鑑別を行います。
胃潰瘍は胃の中を見れば把握できますが、
症状だけでは胃潰瘍だとは断定できません。
特に胃潰瘍の症状は様々なので、問診だけでは胃潰瘍の特定は難しいです。
また、胃がんの可能性もありますので、
内視鏡にて胃の内部を検査し、症状を特定します。
また、胃潰瘍の状態は様々なので、内視鏡にて確認することで、
胃潰瘍の進行具合を確認し、適切な治療方法を策定します。
胃に出血が見られる場合、
内視鏡にて止血剤を注射するなどして止血処置を行います。
内視鏡で止血を行う場合、検査したその日に止血することもできますので、
治療そのものは短時間で可能です。
出血がみられない場合、投薬治療が行われます。
胃酸の分泌を抑える薬や粘膜保護の薬を用います。
ピロリ菌感染の場合、ピロリ菌の除菌も投薬にて行います。
主に抗菌薬とプロトポンプ阻害薬を併用することになります。
投薬期間はおよそ1週間となっています。
胃潰瘍の治療後、さらには予防も規則正しい生活を
心掛けることが大切で、特にストレスに気を付けます。
疲労が蓄積されている時には休息をとること。
睡眠時間をしっかりと確保すること、
適度な運動を心掛けるなどしてリフレッシュすることも大切です。
また、食生活の見直しも大切です。
栄養バランスという点はもちろんですが、よく咀嚼することも大切です。
よく噛まずに飲み込んでしまうと、消化が追い付かず、胃に負担をかけてしまいます。
このように、基本的に「胃に負担をかけないこと」が胃潰瘍の予防、
さらには治療後の注意点になります。
その点では患者自身はもちろんですが、周囲のサポートも大切です。
胃に優しい献立の策定、さらには日常生活の中で過度なストレスを与えないような配慮も大切です。