ゲーム依存症の医学病名を「ゲーム障害」といいます。
2019年5月に、WHO(世界保健機関)が国際疾病分類に加えました。
ゲームに熱中し、利用時間が次第に長くなり、制御ができず自分自身でコントロールできなくなることで、健康面や人間関係に問題など日常生活に支障が出ます。
例えば、ゲームをするために食事や睡眠がおろそかになったり、ゲームのことをずっと考えてしまい、他の活動に対して興味を失ったりします。
その結果、友人を失ったり、家族関係が悪くなったり、勉強や仕事など本業がおろそかになったりして、
本人だけではなく、周りの人が困る状況にもなります。
以前は、10~20代の子どもや若者の依存として認識されていました。
しかし、最近ではスマートフォンの普及とともに、30~40代の患者も増加してきているといわれています。
特に、インターネットに接続されているオンラインゲームの場合、ゲームが絶えずアップデートされます。
そのため、サービスが終了しない限り、ゲームに終わりがありません。
また、一緒にプレイする仲間や敵がいます。
そのため、そこに対人関係や競争が生まれることで、ゲームそのものに加え、対人要素が依存性を益々高める要素になります。
「ゲームにはまっている」と本人や周囲の人も気軽に考えているうちに進行してしまいます。
依存症になる原理はアルコールやギャンブルの依存と同じです。
スマホやゲームなどの刺激があると、脳内にドーパミンというホルモンが分泌されます。
ドーパミンは脳の「快楽物質」のひとつで、
ドーパミンの反応は異常なものではなく、ごく普通に起こる反応です。
楽しいことがあり興奮を感じたり、快感や達成感、驚き、新しいことを行ったときに分泌されます。
ストレスがかかっている状態でなければ、ある程度抑制が働き、
ドーパミンが出すぎることはありません。
しかし、ストレスが強くかかってしまう状況がある場合、
その後に楽しいことが起こると、過剰なドーパミンが放出されます。
過剰なドーパミンの放出が繰り返し続くと耐性が生じてしまい、
同等の快楽や強い刺激を求めるようになります。
結果、依存が形成されてしまいます。
代表的な症状には以下のようなものが挙げられます。
・頻度や開始・終了時間、内容などゲームに関する行動がコントロールできなくなる。
・ゲーム優先の生活となってしまう。
・ゲーム以外の楽しみに使う時間が減る。
・日常行うべき責任のあることに使う時間が減る。
・ゲームによって、自分自身の健康や、家族との関係、社会的な生活、学業や仕事など本業、
その他社会生活において明らかに問題を引き起こしているにも関わらずゲームをやめられない。
健康面では以下のようなことがあらわれると考えられます。
・長時間画面を見続けることによる視力の低下。
・運動量が減ることによる肺活量の減少。
・ゲームに関連する情報を脳が認識すると興奮しやすくなるため、
なかなか寝付けず不眠になったり、昼夜逆転生活など、睡眠障害。
ゲーム依存症はほかの依存症と違い、直接物質を摂取するものではありません。
そのため、身体的依存は生じず、精神的依存の改善が課題になります。
WHOは「ゲーム依存症」と診断される可能性がある“診断基準”を発表しています。
以下の3つの症状が1年以上継続している場合「ゲーム障害」と診断されます。
・ゲームの時間や頻度を自分の意思でコントロールできない。
・その他の生活上の関心事や日常生活よりもゲームを最優先にしてしまう。
・日常生活で問題が起きていたとしても、ゲーム活動を継続、もしくはエスカレートさせる。
しかし、より深刻な場合は1年より短くても診断される可能性もあります。
自己判断はせず、医療機関を受診しましょう。
現在、ゲーム障害に有効な薬物治療はありません。
そのため、治療法は通院をする中での「カウンセリング」や「デイケア」、
これらでもうまくいかない場合に「入院治療」が行われます。
ただし、「入院治療」に関しては、現在行っている医療機関は限られています。
ゲーム依存症になる背景として、孤独感や低い自己肯定感、
トラウマや日常的なストレスなどがあるケースがあります。
一時的にゲーム依存症が改善されたとしても、
そもそもの根っこにある
「生きづらさ」が解消されていないと、本人の苦しみは継続してしまいます。
そのため、臨床心理士や精神科医との関わりの中、
そして回復施設等でカウンセリングを受け、認知行動療法なども用いながら、
患者様本人が生きていきやすい思考や考え方に働きかけていきます。
ゲーム以外にも楽しいことがあるということを実感してもらう方法です。
集団で運動して、体力の低下を感じたり、食事をしたりして、
ゆっくり味わう楽しみを感じたりしてもらいます。
ディスカッションをすることで「ゲームの時間を減らすためにはどうしたらいいのか」や
「ゲーム以外の日常的な活動を充実させる方法は」
というテーマなどで話し合うこともあります。