適応障害とはストレスに起因する感情の起伏、あるいは行動によって社会的機能が阻害される状態です。 例えば、日常生活の中でストレスを生じたことで、仕事そのものができなくなってしまったり、 あるいは学校に行くのが嫌になってしまったりなど、ストレスをきっかけに、社会活動そのもの継続が困難になる状態を指します。 適応障害はしばしばPTSDと混同されることがありますが、特定事象を起因とするPTSDに対し、 適応障害は日常生活の中で起こり得るものです。 例えば、人間関係、職場や学校での体験・経験。これらがきっかけのストレスによって、日常生活に支障をきたすものです。
適応障害の原因はストレスですが、単純なストレスだけではなく、
ストレスが複合的に絡み合うことで適応障害が発症するケースがあります。
例えば、人間関係でストレスを感じている時に
先生や上司に怒られて新たなストレスを感じ、適応障害へと発展してしまうケースや、
対人だけではなく、急に雨が降ってくるなどの自然災害、
通行中の車が急に大きなクラクションを鳴らしたりなど、
ストレスに関する全般がきっかけに成り得るものです。
ここでポイントとなるのが、ストレスの耐性は人それぞれ異なる点です。
他の人にとってはストレスにならないようなことでも、
患者様自身にとっては大きなストレスになることもあります。
つまり、適応障害は決して誰にとっても無縁のものではありません。
適応障害の症状は患者様によって異なります。
何をしてもイライラしてしまうケースや、気力が湧かないケース、
あるいは楽しさを全く感じなかったり、ネガティブ思考に傾いてしまったりなど、
緊張状態が続くなど、精神的に不安定な状態となります。
また、その精神的不安定な状態が、更なる症状を招くケースもあります。
急にお酒を飲みすぎたり、ギャンブルに熱中したり、
あるいは攻撃的な面が目立つようになる場合もあれば、
赤ちゃん言葉を使用するなどして甘えるなど、様々な症状がみられます。
適応障害は気付きにくい点も特徴です。
例えば、ストレスに起因するイライラは誰にでもありますので、
その瞬間に適応障害だと自覚することは、現実的に難しいです。
急に気力が低下したりなど、適応障害と見られる症状全般は、
日常生活のふとした時に感じることもありますので、
即座に適応障害だとは分からないものです。
一つの基準として、引き金となるストレスから適応障害まで
およそ3か月以内に発症している点が挙げられます。
そのため、診断から3か月以内にストレスとなったことはないか、
うつ病や統合失調症といった症状がないのかなどと併せて適応障害かを診断します。
適応障害の治療方法は、ストレスの原因を取り除く点にあります。
そして、ストレスの原因は人それぞれ異なりますので、
適応障害の治療は患者様によって異なります。
例えば、人間関係が原因で適応障害が発症した場合、
人間関係を改善するなどして、人間関係からストレスを取り除くことが求められます。
転職、転校、あるいは職場問題など、環境に対してストレスを感じているのであれば
休職等にてストレスを緩和させることも適応障害治療です。
このように、ストレスの除去・緩和が適応障害の治療の肝になりますので、
どのストレスが起因した適応障害なのかを突き止めることが、適応障害の治療の一歩目です。
適応障害を含め、かつては神経症と呼ばれていた症状に
有効とされている治療法の一つに森田療法が挙げられます。
森田療法とは、森田正馬によって提唱された精神療法で、
神経症は内向的、あるいは理想主義、
負けず嫌いなど神経性の性格の持ち主に多くみられるものであることに着目し、
「とらわれの機制」と名付けられた心理的メカニズムが原因だとしました。
そこで、不安や恐怖、ストレスを無理に排除しようとするのではなく、
そのような現実を受け入れ、あるがままの姿勢を獲得することが
神経症の改善に繋がるとされたのですが
適応障害の治療法として用いられることもあります。
適応障害の原因はストレスなので、
予防は日々の生活の中でストレスを蓄積させないこと、
あるいは発散させることが重要です。
適度にストレスを発散させることで、ストレスの蓄積を防止し、
適応障害の予防になりますので、時には息抜きも重要です。
治療後もやはりストレスを感じない、
あるいは発散する生活を心掛けることが大切ですが、
もしもストレスが溜まっているなと自覚した時には、
無理をしてでも休息を取るなどしてストレスの要因を取り除くことを優先しましょう。
何をストレスに感じるかは人それぞれです。
つまり、ストレスとの付き合い方も人それぞれなので、
ストレスの原因を把握したら、ストレスを感じない生活を心掛けることもまた、
適応障害の予防、さらには治療後のケアになります。